Wiiでインターネットアメリカのニールセンは2012年2月15日に、子供を主に対象とした、同国内の家庭におけるゲームの浸透状況を伝えるレポート「US Gaming: A 360o View」を発表した。そのレポートでは数年に渡るアメリカの家庭内でのゲーム機やゲーム機として多々使われる携帯電話などの普及・利用状況が、多方面の視点で描かれている。今回はその中から、「据え置き型ゲーム専用機の使われ方の変化」を見て行くことにする。





今調査はニールセンの調査パネル(調査の際に回答者となる、あらかじめ登録されたメンバー)によるもので、2012年分のデータは1月11日から17日、2011年分では2011年10月13日から17日にかけて実施されている。また対象年齢は18歳以上で人数は2000人以上、「ティーン」は13-17歳で700人以上。さらに「キッズ」は6-12歳で保護者同伴を前提とし300人以上を対象としている。男女比は1対1。それぞれの値は調査年の直近における国勢調査の結果を元にウェイトバックが実施されている。

先に【最新ゲーム機56%・iOSモバイル39%…米世帯でのゲーム用機器普及動向】で記したように、Wii・Xbox360・PS3に代表される最新の据え置き型ゲーム機を保有している世帯は過半数に届いている。

↑ 米世帯単位でのゲーム機・関連機普及率(2012年Q1)
↑ 米世帯単位でのゲーム機・関連機普及率(2012年Q1)(再録)

それではこの据え置き型ゲーム機達はどのような使われ方をしているだろうか。無論ゲーム機なのだからゲームがメインのはずではあるが……。まずはXbox360。

↑ 主要据え置き型ゲーム機の利用性向変移(米13歳以上、2010年Q4-2011年Q4、利用時間シェア比)(Xbox360)
↑ 主要据え置き型ゲーム機の利用性向変移(米13歳以上、2010年Q4-2011年Q4、利用時間シェア比)(Xbox360)

まずはこの1年でオンラインゲームの利用時間が増え、オフラインとほぼ同時間にまで達したのが目に留まる。昨今の最新ゲーム機はどれも「ネットでつながる」がセールスポイントで、それを使ったゲームも増えている。プレイ時間が増えるのも当然。

次いで気がつくのは「オンデマンド・ストリーミング動画視聴」時間が4ポイント増加していること。DVDなどのソフトやダウンロードした動画視聴の時間は減っているのに、ストリーミング動画の視聴時間は大幅に増えている。ゲーム以外のマルチメディア機能の活用では、リアルタイム展開される動画などを視聴する人が増えたことになる。ストリーミング動画がすべてリアルタイム(ライブ放送)ではないが、逐次オンライン回線でつながっているからこそ使えるという点では同じように伸びている「オンラインゲーム」と肩を並べることになる。

PS3(プレイステーション3)では少々傾向が異なる。

↑ 主要据え置き型ゲーム機の利用性向変移(米13歳以上、2010年Q4-2011年Q4、利用時間シェア比)(PS3)
↑ 主要据え置き型ゲーム機の利用性向変移(米13歳以上、2010年Q4-2011年Q4、利用時間シェア比)(PS3)

「オンラインゲーム」「オフラインゲーム」の伸び縮みがXbox360とは逆で、むしろ「オブラインゲーム」の方が増えている。発売されたゲームの傾向、さらには2011年4月に発生した「個人情報流出事件」が多分に影響しているものと思われる。

一方で動画周りではXbox360同様に「オンデマンド・ストリーミング動画視聴」が大幅に増加し、他の視聴スタイルはヨコヨコか減退。やはり「ストリーミング動画を据え置き型ゲーム機で視聴する」スタイルが増加している動きが確認できる。

最後にWii。DVDなどのプレイヤー機能、ダウンロードした動画を視聴する機能は無いので、この項目は空欄となっている。

↑ 主要据え置き型ゲーム機の利用性向変移(米13歳以上、2010年Q4-2011年Q4、利用時間シェア比)(Wii)
↑ 主要据え置き型ゲーム機の利用性向変移(米13歳以上、2010年Q4-2011年Q4、利用時間シェア比)(Wii)

Xbox360やPS3同様、「オンデマンド・ストリーミング動画視聴」の大幅増加、他の項目の横ばい・減退ぶりが目に留まる。

元資料ではこの傾向について「ストリーミング動画視聴はゲーム専用機で立ち位置の拡大を見せている」と説明している。直近1年で配信されるテレビや動画が特段面白くなったという話は聞かないので、動画提供側のシステムの改善や「コミュニティとしての領域拡大によるコンテンツの質・数の向上」で魅力が増加したこと、ライバル端末でもあるスマートフォンやタブレット機での視聴が容易になり、「ストリーミング動画視聴」に対する抵抗感が薄れたことなどが、今件の動きの要因と思われる。

もっとも、視聴している動画が「その端末独自のもの」ではなく、YouTubeなどウェブサービスが提供するものならば、特定のゲーム機で観る必然性は無くなってしまう。パソコンでも他のゲーム機でも、スマートフォンやタブレット機でも視聴はできる。本来「その機種でしか出来ないこと」ではなく、「他の機種でもできること」の利用率が増加したことについて、単に「利用性向の分散化」と喜んでばかりもいられない。他の機種に代替される可能性は多分にあるからだ。