スマートフォンで提供されるアプリケーション(アプリ)のビジネスモデルは多種多様に及ぶが、大よそは「無料で提供して間接的にさまざまな便益を得る(宣伝効果、広告による収益計上模索)」「アプリそのものを購入してもらう」「アプリ内でさまざまな課金対象を設けて購入してもらう」の3タイプに分類される。他のインターネットにおけるコンテンツビジネスと図式はさほど変わらないものの、フリーミアム概念やアプリの製作・提供ハードルの低下に伴い、さまざまな思惑が入り混じり、スマホアプリ市場、特にゲーム界隈は複雑怪奇な状況にある。今回はMMD研究所などが2015年11月30日に発表したスマートフォン所有者におけるゲームの利用動向に関する調査結果から、スマートフォンのゲームアプリにおける、有料アプリの購入状況などについて確認していくことにする(【発表リリース:スマートフォンゲームアプリ課金への支払い経験者の64.2%が何かしらのルールを決めている】)。




ゲームをし始めると対価支払いのハードルが下がる?


今調査は2015年11月18日から19日に渡りスマートフォンを所有する15歳以上の男女に対してインターネット経由で行ったもの。有効回答数は1957人。世代構成比などは非公開。属性区分は会社員918人・学生698人・主婦341人。

冒頭で触れた通り、昨今ではスマートフォンのアプリ、特にゲームアプリに関して、有料アプリの購入や、そのアプリ内での課金について、さまざまな体験談や議論が交わされている。ビジネスモデルだから仕方がないとして諦める、むしろ積極活用をする人も少なくないが、他方それでもなお無課金を貫き通す人も多分にいる。

それでは今調査対象母集団のスマートフォン所有者では、どれだけの人が有料ゲームアプリの購入や、ゲームアプリ内課金への支払い経験をしているだろうか。

↑ 有料スマホゲームアプリの購入経験とゲームアプリのアプリ内課金への支払い経験(2015年11月、スマホ所有者、ある人)
↑ 有料スマホゲームアプリの購入経験とゲームアプリのアプリ内課金への支払い経験(2015年11月、スマホ所有者、ある人)

全体では3割近くが有料ゲームアプリを購入した経験があるとし、1/3強がゲームアプリ内で課金をしたことがあると答えている。興味深いことに、会社員・学生・主婦それぞれの属性で、ゲームアプリ内課金に対するハードルにさほど違いは無い一方で、有料ゲームアプリの購入経験は学生が一番高く1/3強、会社員が3割足らず、そして主婦にいたっては2割にも届いていない。

一度に支払う金額も要因だが、何らかの対価を支払わないと始められないゲームでは入口で躊躇してしまうのに対し、一度プレイし始めてある程度夢中になると、対価支払いへのハードルが多少下がることが示唆される結果といえる。特に主婦層においてすら、3割強が課金経験ありとの回答を示しているのは興味深い結果ではある。

課金を踏みとどまった人の心境


逆にゲームアプリの対価支払い周りで、支払いをしなかった人の心境がうかがえるのが次のグラフ。これはゲームアプリ内課金をしたことが無い人に、課金支払いをしそうになった(けれど結局はしなかった)人(課金をしなかった人のうち17.6%)に対し、どうして迷った上で結局課金支払いを踏みとどまったのかを尋ねた結果。最大の回答値は「一度課金をするときりがない」で、実に6割を超えている。

↑ スマホアプリゲームのアプリ内課金への支払いをしようと考えたが、結局しなかった理由(複数回答、2015年11月、しなかった人限定)
↑ スマホアプリゲームのアプリ内課金への支払いをしようと考えたが、結局しなかった理由(複数回答、2015年11月、しなかった人限定)

一度課金をしてしまうとたがが外れ、次々に課金をしてしまう。それは同じゲームで遊んでいる、あるいは他のスマホゲームアプリで遊んでいる他のプレイヤーの挙動で十分過ぎるぐらいに知っているのだろう。そして自分自身の自制が恐らくは利かず、同じような状況に陥ってしまうであろうことも。

次いで多いのは「無支払でも十分楽しめる」で33.5%。「十分」との表現が微妙だが、要は課金による費用対効果を考え、無支払でも十分な効果を得られているとの判断によるもの。他方、これは学生による回答が多分に及んでいると思われるが、「目標達成には金額が足りない」が15.4%。中途半端な課金をしてもしたいことはできないだろう、しかし達成達成のための課金は手持ちに無い。ならば最初から課金をしなくても良いとするものだ。

一方で回答率は低めとなるが、支払い方法の問題が複数挙がっている。これはアプリ提供側としては頭の痛い問題に違いない。

昨今ではソーシャルメディアと連動するゲームアプリも多く、課金時の状況を報告するつわものプレイヤーも多々見受けられる。しかしそれらの人達のお財布事情が、自分自身のものと同じとは限らない。自前の財力と判断に合わせ、適切なゲームアプリライフを楽しみたいものだ。


■関連記事:
【10代の子供達のテレビやゲーム、ソーシャルメディアの利用時間(2015年)(最新)】
【基本無料のコンテンツ、対価の支払いをしても良いと考える人はどれ位いるのだろうか(2015年)(最新)】
【ソーシャルゲームの楽しみ方とゲーム時間との「なるほど」な関係】