【任天堂、Wiiの他社ソフト低迷について「制作に時間がかかる」「新ハードに慣れていない」と分析】などでもお伝えしたように、[任天堂(7974)]は2009年5月8日、2009年3月期における決算説明会の資料を一般公開した。その資料には任天堂から発売されているゲーム機に関するさまざまな、興味深い分析データが掲載されていた。今回はその中から、「任天堂発の主要ゲーム機WiiとDSにおける年齢階層別のユーザー数」を抽出し、両ハードの現状を見てみることにした(【該当ページ】)。




任天堂では「家庭に浸透するゲーム機」を事あるごとに語っている。商品選択や購入の際にもっとも有効な手段となる「口コミ」では、興味関心の違いや世代、性別を超えて浸透しやすい唯一のグループが「家庭・世帯」であるからだ。学校や会社などでは起こりにくい「世代間・男女間の口コミ」が発生しやすく、縦横無尽に広がる口コミ効果を期待できる。

DSでは年齢階層別のユーザー数は保護者層の30代前後とその子ども層の10代前半までが厚い傾向にあるが、それでも他の年齢階層もそれなりに多くのユーザーを確保しており、バランスの良い構成をしている。

DSの年齢階層別ユーザー数(2009年1月)
DSの年齢階層別ユーザー数(2009年1月)

年齢階層別ユーザー数がどの年齢層でも厚いということは、どの階層向けにあてたソフトでも、それなりにセールスが記録されうることを意味する。子ども向け、大学生向け、若年サラリーマン向け、中堅層向け、高齢者向け、多種多様な年齢層向けのソフトが出ても、それを受け止めるだけの客層があるため、ソフトも自然に幅広いものが発売されることになる(例えるなら、読み書きできる人がほとんどいないエスペラント語用ゲームソフトを発売しても、誰も買わない)。

ところが同じく任天堂の調査によると、家庭用据え置き型ゲーム機のWiiにおいては、ユーザーの年齢階層がやや片寄る傾向が見られるという。いわゆる「ふたこぶラクダ型」で、子どもとその保護者に多いというものだ。

Wiiの年齢階層別ユーザー数(2009年1月)
Wiiの年齢階層別ユーザー数(2009年1月)

元々「10代前半まで」「30代-40代前半」はゲームに対する興味関心が強く、どのハードでも当初はこのような階層の形となりうる。それが段々と他の年齢階層にも浸透し、幅広い年齢階層を利用者層として持つハードになる(上記のDSのように)。それがWiiの場合、現時点においても各年齢層への浸透が遅れ、いまだに「保護者とその子ども」に片寄る傾向が見られる。言い換えれば「Wiiは青年層や壮齢層のユーザーが少ない」ということ。

Wiiのイメージとしては「子どもから大人まで」「三世代家族みんなで」というイメージが強い。しかし現状では、確かに「子どもと大人」は遊ぶ人が多いものの、そこから上下の年齢階層には広まり難い傾向を示していることが分かる。



「子どもとその保護者以外の年齢階層が楽しめるソフトが少ないから、その階層のユーザーが増えない」のか、「子どもとその保護者以外の年齢階層が少ないから、その階層向けのソフトが出にくい」のか。たまごとニワトリの関係のような話ではあるが、大抵のハードでは両要素がけん制しあって次第に浸透していくもの。ところがWiiでは【任天堂、Wiiの他社ソフト低迷について「制作に時間がかかる」「新ハードに慣れていない」と分析】にもあるように、サードパーティーの参入が足踏み状態にあり、片方の前提からなかなか前進することができず、結局現在でも「ふたこぶラクダ」状態を解消し切れていない。

ハードの特性・事情もあるだろうが、Wiiの各年齢階層別ユーザー数がなだらかなものとなり、幅広い層を受け止められるようなユーザー階層になるには、もうしばらく時間を置くしかないのかもしれない。